境界が静かに消える場所

保久良神社

参道を歩き始めたとき、 空気の層がゆっくりと変わっていくのを感じた。 光と影の境界がほどけ、 世界が静かに“中心”へ向かっていく。

保久良神社は、 カタカムナ文字が生まれた場所だと聞いた。 中心に心があり、 そこからそっと言葉がにじみ出ていく—— その説明が、胸の奥で静かに響いていた。

鳥居の向こうに広がる海岸線を見たとき、 その“にじみ”が風景と重なった。 心の中心と、世界の中心が ひとつの線で結ばれるように。

空が海に溶け
海が空にほどけ
境界が静かに消えていく

その境界の消失は、 外の風景の変化ではなく、 私の内側で起きている“ゼロへの帰還”だった。

陰と陽が重なり合い、 プラスもマイナスもない、 ただ静かな中心だけが残る。

言葉になる前の気配が、 心の奥でそっと息をしている。 その気配が、 やがて Story となり、 さらに奥で Essais へと変わっていく。

私はその中心に立ち、 ただ静かに、 言葉が生まれる前の自分へ戻っていった。

石畳に映る影