Vaco, Lucili, vaco, et ubicumque sum, ibi meus sum.
私には時間がある、ルキリウスよ、時間があるのだ。そして、どこにいても、そこで私は自分自身のものである。
仕事の多さが学問の妨げになっていると、自分自身にそう思い込ませたがる者たちは、嘘をついている。
彼らは忙しさを装い、それを増やし、自分で自分を忙しくしている。
私には時間がある。
ルキリウスよ、時間があるのだ。
そして、どこにいても、そこで私は自分自身のものである。
なぜなら、私は用事に自分を明け渡すのではなく、ただ貸しているだけだからだ。
時間を失う理由を、わざわざ探し回ったりもしない。
どこに身を置いても、そこで私は自分の思索を進め、心の中で何か有益なことを繰り返し考えている。
友人たちに自分を与えるときも、それによって自分自身から自分を引き離しはしない。
また、ある時の巡り合わせや、市民としての務めから生じた事情によって一緒になった人々のもとに、とどまりつづけるわけでもない。
私は、最良の人々の一人ひとりと共にいる。
彼らがどの場所、どの時代に生きていたとしても、私は自分の心をその人々のもとへ送る。
私は、デメトリウス*1 ――人々のなかでも最良の人物――を、連れて歩いている。
貝紫*2 の衣をまとった者たちを離れ、半裸の彼と語り合い、彼を称賛する。
どうして称賛せずにいられよう。
私は、彼には何ひとつ欠けていないのを見たのだから。
人は、すべてを軽んじることはできる。
だが、すべてを所有することは誰にもできない。
富へ至る最短の道は、富を軽んじることである。
だが、私たちのデメトリウスは、すべてを軽んじた者としてではなく、まるでそれらを他人に所有させてやった者であるかのように生きている。
ad illos, in quocumque loco, in quocumque saeculo fuerunt, animum meum mitto.
彼らがどの場所、どの時代に生きていたとしても、私は自分の心をその人々のもとへ送る。
Vale.
*1 Demetrius:1世紀ローマで活動した犬儒派の哲学者。コリントス出身とされ、カリグラ帝からウェスパシアヌス帝の治世にかけてローマで活動し、セネカと親交が深かった。物欲のなさで知られ、カリグラ帝が20万セステルティウスの金で彼を篭絡しようとした際、そのようなはした金で試すくらいならむしろ全財産を差し出すべきだと笑って突き返した逸話が伝わる。
*2 貝紫:貝紫貝から採れる紫の染料で染めた衣。古代ローマでは非常に高価で、富や高い身分の象徴とされた。
LXII. SENECA LUCILIO SUO SALUTEM
[1] Mentiuntur qui sibi obstare ad studia liberalia turbam negotiorum videri volunt: simulant occupationes et augent et ipsi se occupant. Vaco, Lucili, vaco, et ubicumque sum, ibi meus sum. Rebus enim me non trado sed commodo, nec consector perdendi temporis causas; et quocumque constiti loco, ibi cogitationes meas tracto et aliquid in animo salutare converso.
[2] Cum me amicis dedi, non tamen mihi abduco nec cum illis moror quibus me tempus aliquod congregavit aut causa ex officio nata civili, sed cum optimo quoque sum; ad illos, in quocumque loco, in quocumque saeculo fuerunt, animum meum mitto.
[3] Demetrium, virorum optimum, mecum circumfero et relictis conchyliatis cum illo seminudo loquor, illum admiror. Quidni admirer? vidi nihil ei deesse. Contemnere aliquis omnia potest, omnia habere nemo potest: brevissima ad divitias per contemptum divitiarum via est. Demetrius autem noster sic vivit, non tamquam contempserit omnia, sed tamquam aliis habenda permiserit. Vale.
出典は『倫理書簡集』第六巻・書簡六十二番(Seneca, Epistulae Morales ad Lucilium, Liber VI, Epistula LXII、The Latin Library所収)です。欠番はありません。