たゆたう光の中で

奥入瀬渓流
光が水に触れるたび、
世界はゆっくりと形を手放していく。
緑は色ではなく層になり、
影は境界を失い、
ただ静かな呼吸だけが森を満たしていた。

苔の奥に沈む小さな宇宙に触れたとき、
過去も未来もほどけていき、
わたしという輪郭は、
光の中に溶けていった。
光と影のあいだで、
世界はそっと輪郭を手放す。
その静けさに、わたしも溶けていく。
その光は、いまも胸の奥でたゆたっている。