揺らぎの輪郭

波紋

物事をありのままに見ることは、 静かな湖面を見つめるより難しい。

人は、これまでの旅で拾い集めた 癖や、記憶や、痛みや、願いの影を 知らぬ間にレンズにしてしまうから。

水面に落ちた一滴が、 世界の輪郭をわずかに揺らす。 その波紋は、外側の出来事ではなく、 内側の揺らぎをそっと映し返す。

「これは本当に、いま起きている出来事なのか」 「それとも、私の内側がそう見せているだけなのか」

問いは静かに沈み、 答えは波紋の中心から立ち上がる。

やがて水面は静けさを取り戻し、 本来の姿を映しはじめる。

そのとき、世界はありのままに見えるのではなく、 “ありのままの自分”が世界を見ているのだと ふいに理解する。

揺らぎは、恐れではない。 揺らぎは、変容の予兆だ。

波紋の中心に落ちた一滴は、 あなたの内側のどこかで 新しい章の始まりを告げている。

波紋